住宅地としての立地条件
①地形、地質
②公用施設(道路、河川、公園等)
③供給処理施設(上・下水道、電力、ガス、塵芥・廃棄物等)
④公益施設(学校、市役所、公民館、郵便局等)
⑤商業施設(商店街、スーパー、コンビニ、ショッピングモール等)
⑥周辺地域の環境との調和
⑦各種法律上の規制
⑧都市中心部等、業務地区への距離(通勤時間、通勤手段)
これらの条件のうち②~⑧は都市計画の立案に際して検討されるべき事項であり、また主に人為的に計画、改善できる事項です。
①の地形・地質にに関する条件は極めて重要な条件であるにもかかわらず人為的に改善することが困難な条件ですので、最重要項目としてご注意ください。
災害に対して強い土地と弱い土地がある
住宅地の立地条件として、地形・地質にに関する条件は極めて重要な条件であるにもかかわらず人為的に改善することが困難な条件です。住宅地としての立地条件として、最も基本的かつ最も重要なこの条件については、先ず最初に、十分検討してください。
<1>山麓・火山麓
この地形で注意すること
①一見なだらかな地形に見え、住宅地として適しているように見えるが、過去の土石流や土砂崩壊による堆積でできた地形や地すべりによってできた危険な地形があるので注意!
②背後の地形に注意!・・・崖下や急傾斜地を避ける
③地質・・・風化の進んだところ、破砕帯(注1)、活断層に近いところは避ける
④地盤・・・軟弱な低湿地は避ける
(注1)断層等により破砕された岩層が帯状に分布しているところ
<2>丘陵、台地、段丘
台地、段丘及びなだらかな丘陵は、一般的にいえば、水はけもよく、地盤も安定しており、洪水や地震等の自然災害に対して安全度の高いところであり、宅地として積極的に利用すべき地形である。
この地形の中で、住宅地を入手する場合に注意するところ
①台地、丘陵の縁辺部(崖下等)は集中豪雨のときに崖崩れを起こす危険が高い
②丘陵を切り盛りして平坦化した住宅地では、切土部と盛土部にまたがる住宅地、土留めや排水工事の十分でない盛土地等は崩壊のおそれがあること
③台地の上の浅い谷等は、現地に入っても一見して気づかないことが多いが、豪雨時には、一時的に浸水することもあり、注意を要します。
<3>低地
低地は一般的に洪水や地震に対して弱く、防災的見地からは住宅地として好ましくない。
しかしながら、日本国内の大都市地域は、都市としての広がりを得やすく、用水や交通等の便利さから大部分が低地に立地している為、低地の特性・危険性を知りながら利用していくほかないと考えられています。
低地の中で災害に対して比較的危険度が低いところ
①扇状地(山地の末端部から平野部への川の出口等に扇状に広がる地形)の中の微高地
②自然堤防(低地の河川沿いに、過去の洪水による堆積土砂で形成された微高地)
③砂丘、砂州(数千年前の海進時に形成された砂の高まり)
④古い天井川(川底が周辺の低地より高い廃川敷)
昔からの農村集落の分布をみると、このような、砂質で水はけのよい微高地を選んで立地していますが、最近の大都市近郊では、そのようなことはおかまいなしに住宅地がつくられていることが多いので注意をしてください。
低地の中でも特に災害の危険度が高いところ
①沿岸部の標高の低いデルタ地域
②旧河道(過去の河川流路)
③自然堤防や人工的な工作物(堤防、道路、鉄道等の盛土)に囲まれた排水の悪い低地
これらの地域は地盤も軟弱、低湿で地震や洪水の被害を受けやすいのでご注意ください。
これらの地域にやむを得ず住宅をつくる場合には、以下が必要です。
①十分な盛土を実施する
②周辺地域の防災施設(堤防、排水施設、避難所等)を確かめる。
<4>干拓地、埋立地
海面や湖面の一部を堤防で囲み、中の水を排除したり(干拓地)、土砂で埋め立てたり(埋立地)したこれらの人工的な土地も、一般には住宅地としてはあまり好ましい土地とは言えない。特に干拓地は、一般に海面以下の場合が多いので注意を要します。
埋立地は、一般に海面に対して数mの比高をもち、干拓地よりは安全である。
平均海面に対し、4~5mの比高があり、護岸がしっかりしていれば宅地としての利用も十分可能ではあるが、高潮や津波、あるいは地震等の常襲地帯では、工場、倉庫、公園等の利用を優先するべきであると考えられます。
特に注意すべき点
①新しい干拓地は、土地が低いことが一見してわかるが、有明海沿岸や伊勢湾沿岸のように、幾重にも堤防が重なる古くからの干拓地や、海からやや離れた古い干拓地等は、海面以下ないし海面すれすれの土地であることを忘れがちであり、十分注意を要します。
②塵芥、廃棄物等による埋立地の場合には、地盤沈下が激しい場合が多いので注意が必要。
近年の宅地災害の動向を見ると・・・
①都市の中の中小河川の氾濫が多い
(原因)
(1)急速な都市化、宅地化に伴い、降雨時に雨水が短時間に大量に川に流れ込むこと
(2)本流筋の改修が進み、これに流入する支川との間の流量調整が必ずしも円滑でなくなっていること
②崖崩れ(土砂崩壊)や土石流等による宅地災害が多い
(原因)
谷筋や、急斜面等、そもそも地形的に住宅に不向きな場所に住宅地を造っていること
行政による防災対策は進んではいるのですが、それをも上回る降水量であったり、地球規模の気候変動に都市機能が追いつかないのが現状です。今出来る宅地災害を避けるための最大の手段は、地形・地質が住宅地に適している土地を選ぶことではないでしょうか?
2020年7月17日
不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を事前に説明することを義務づけることとする宅地建物取引業法施行規則の一部が改正となりました。
~背景~
近年、大規模水災害の頻発により甚大な被害が生じており、不動産取引時においても、水害リスクに係る情報が契約締結の意思決定を行う上で重要な要素となっているところです。そのため、宅地建物取引業者が不動産取引時に、ハザードマップを提示し、取引の対象となる物件の位置等について情報提供するよう、2019年7月より不動産関連団体を通じて協力を依頼してきたところですが、重要事項説明の対象項目として追加し、不動産取引時にハザードマップにおける取引対象物件の所在地について説明することを義務化することとなりました。
また、雨の降り方や土地利用の変化等によりハザードマップに示された危険想定区域以外のところでも浸水等が発生する場合があり、記載された内容についても、今後変更される場合があることをご承知おきください。
⇒熊本市『ハザードマップ』ページへ
⇒上益城郡益城町『防災サイト』ページへ
⇒その他市町村『わがまちハザードマップ』ページへ
熊本市ホームページより
熊本市ではこれまで、人口増加やモータリゼーションの進展等を背景に市街地が拡大してきました。拡大した市街地のままで、人口が減少すれば、今まで身近に利用できた商業、医療、金融機能や公共交通等の日常生活に必要な機能が失われ、現在の暮らしやすさが損なわれてしまうことが懸念されます。
このことから、人口減少・高齢社会に適応可能な都市づくりを進める必要があります。そこで、中心市街地や地域の核となる15の地域拠点に都市機能を維持・確保し、これらを結ぶ利便性の高い公共交通沿線の人口密度が維持された“多核連携都市”を実現し、持続可能で誰もが移動しやすく暮らしやすい都市を目指しています。
⇒熊本市『都市計画情報(用途地域・都市計画道路等)』を調べる
市街化調整区域の土地に注意!
『市街化調整区域』とは、本来、一般住宅の建築を認めていない場所です。
市街化調整区域の建築許可制度は、過去に『既存宅地』という考え方から『集落内開発制度』という制度に変わっています。
このまま人口・世帯数の減少が進んだ場合、30年後、50年後、土地の価値がどうなるのか?しっかりと見極めて土地選びをしてください。
都道府県によっては、下記に記載する『都市再生特別法』の観点からも、既に市街化調整区域の開発行為をほぼ認めなくなった地域もあります。
将来、制度・条例が変わることも考えられますので、十分にご注意ください。
⇒熊本市『集落内開発制度指定区域について』ページへ
⇒熊本市『集落内開発制度・説明資料』ダウンロード
区域、建築物の条件を満たす場合、住宅の建築が可能となりますが、『集落内開発制度』による『開発許可』を受ける為に、お時間と費用が必要です。
いわゆるコンパクトシティ政策・・・
コンパクトシティ政策とは
少子高齢化により、日本の総人口は今後100年で100年前の水準に戻っていくそうです。ついては、都市的土地利用の郊外への拡大を抑制すると同時に、中心市街地の活性化を図るのが目的で、生活に必要な諸機能が近接した効率的で持続可能な都市を目指し、実現していく政策となります。
⇒国土交通省『都市再生特別法・コンパクトシティ政策』ページへ
立地適正化計画
熊本市では、多核連携都市を実現するための実行計画として「熊本市立地適正化計画」を定めています。(以下、熊本市ホームページより)
計画の中では、都市機能や居住を誘導するエリア、誘導する施設、実行にあたっての具体的な取組などを定めています。具体的には、都市の骨格を形成する、都市機能誘導区域(中心市街地や地域拠点)を地域生活圏の暮らしを守る最後の砦として維持するとともに、公共交通の充実を図ることで市民全体の暮らしやすさを維持することとしています。
⇒『熊本市立地適正化計画』ページへ
今後、『都市機能誘導区域』『居住誘導区域』以外の場所は要注意!です。
ご注意ください。